学びの多様化学校を深掘り!【関東版】

不登校という困難に直面し、思うように復帰の道のりを歩めないとき、
「うちの子にとって、”今の学校”が合わないのではないか」
「復帰を望めるような、今とは違う環境を考えるときだ」
親心から、そう考えるタイミングがあるはずです。

そんなニーズに呼応するように、近年は「子どもの状態に合わせて、学校や教育課程の側を柔軟に変えていく考え方」が広がっています。

その象徴ともいえる制度が【学びの多様化学校】です。

今回は、そんな文部科学省が2027年度までにすべての都道府県・政令指定都市への設置を目標としている【学びの多様化学校】を深掘りしてみましょう。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387008.htm

学びの多様化学校とは?

学びの多様化学校とは、不登校児童生徒の実態に配慮し、通常とは異なる特別な教育課程を編成できるよう、文部科学大臣の指定を受けた学校です。
※「不登校特例校」はこれの旧称です。

不登校の子どもには、

  • 朝の登校が難しい
  • 長時間の授業に疲れやすい
  • 学習の遅れが大きい
  • 大人数の教室に入りづらい
  • 人間関係に強い不安がある
  • 生活リズムが崩れている
  • 学校そのものに強い抵抗感がある

といったケースが多く見受けられます。

一般的な学校は、学習指導要領に沿って授業時間や教科/学習内容が組まれるのに対し、学びの多様化学校では、そうした子どもたちの背景に合わせて教育課程を柔軟に組むことが認められています。

たとえば、

  • 始業時間や時間割を工夫する
  • 授業時間を短縮する
  • 総授業時数を調整する
  • 小中学校内容の学び直しを取り入れる
  • 少人数・個別の学習を取り入れる
  • コミュニケーションやSSTを授業に取り入れる
  • 体験活動や探究学習を増やす
  • 独自の教科や学校設定科目をつくる

といった取り組みが可能です。

文部科学省も、実際の学びの多様化学校では「学習指導要領にない教科の新設」「授業時数の組替え」「総授業時数の削減」「授業時間の短縮」などが行われているとしています。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387008.htm

https://www.mext.go.jp/content/20240304-mxt_jidou02-000004552_b.pdf

学びの多様化学校には4つの形がある

学びの多様化学校には、本校型・分校型・分教室型・コース指定型の4つの形式があります。
それぞれの概要を見てみましょう。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387004.htm

1.本校型

学校全体が学びの多様化学校として指定されている形です。

学校そのものが、不登校児童生徒に配慮した特別な教育課程で運営されます。

関東では、

  • 八王子市立高尾山学園
  • 東京シューレ葛飾中学校
  • 星槎中学校

などがこれにあたります。

2.分校型

既存の学校を本校とし、そこから分離した分校を学びの多様化学校として設ける形です。

関東では、

  • 福生市立牛浜もくせい中学校(福生市立福生第一中学校の分校)
  • 鎌倉市立由比ガ浜中学校(鎌倉市立御成中学校の分校)

などがこれにあたります。

3.分教室型

既存の学校を母体とし、一部の学級・教室のみを学びの多様化学校として指定する形です。

関東では、

  • 世田谷区立世田谷中学校「ねいろ」
  • 浦安市立浦安中学校「UMI」
  • 大和市立引地台中学校

などがこれにあたります。

4.コース指定型

高等学校などで、学校全体ではなく一部のコースだけを学びの多様化学校として指定する形です。

関東では、NHK学園高等学校「ライフデザインコース」がこれに該当します。

NHK学園高校では、「生活実習」や「職業技術科目」など実習・体験型の学習を通じて、社会性や自立性、学習意欲の向上につなげる教育課程が組まれています。

学びの多様化学校【関東版】一覧

2026年9月現在、文部科学省の最新の設置者一覧を関東1都6県で整理すると、25件の学びの多様化学校があります。

都県学校・教室名主な対象形態
東京八王子市立高尾山学園小学部・中学部小・中学生本校型
東京東京シューレ葛飾中学校中学生本校型
東京東京シューレ江戸川小学校小学生本校型
東京東京みらい中学校中学生本校型
東京世田谷区立北沢学園中学校中学生本校型
東京福生市立牛浜もくせい中学校中学生分校型
東京調布市立第七中学校「はしうち教室」中学生分教室型
東京大田区立御園中学校「みらい学園」中学生分教室型
東京世田谷区立世田谷中学校「ねいろ」中学生分教室型
東京大田区立大森第四小学校「みらい学園初等部」小学生分教室型
東京御成門学園御成門中学校中学生分教室型
東京町田市立山崎中学校「ゆめのき」中学生分教室型
東京府中市立浅間中学校「かがやき」中学生分教室型
東京NHK学園高等学校「ライフデザインコース」高校生コース指定型
神奈川星槎中学校中学生本校型
神奈川星槎高等学校高校生本校型
神奈川横浜きりん学園小・中学生等本校型
神奈川鎌倉市立由比ガ浜中学校中学生分校型
神奈川大和市立引地台中学校中学生分教室型
埼玉さいたま市立いろどり学園小学部・中学部小・中学生本校型
埼玉川口市立芝園学園中学校中学生本校型
千葉習志野市立袖ヶ浦西小学校小学生分教室型
千葉浦安市立浦安中学校「UMI」中学生分教室型
茨城リリーベール小学校「リリーガーデン」小学生分教室型
栃木那須塩原市立三島中学校「プリズム」中学生分教室型
群馬指定校なし

地域別では、

東京14件、神奈川5件、埼玉2件、千葉2件、茨城1件、栃木1件、群馬0件

となっています。

また全国的にも設置は急速に増えており、文部科学省によると、2024年度の35校から2025年度には58校へ増加しました。現在の指定校一覧には2026年度指定校も追加されています。

群馬県には学びの多様化学校がない

一覧を見ると、関東1都6県の中で、群馬県だけが指定校0件となっています。

これは群馬県が不登校支援に消極的という意味ではありません。

群馬県は2026年に、不登校という言葉が持つ否定的な印象を見直し、不登校に代わる名称として「UniPath(ユニパス)」を県として採用し話題を呼びました。

それに続くよう、UniPathの児童生徒への学習支援や居場所づくりを行うフリースクール等への補助も実施しています。

学びの多様化学校を全国に設置する。これが文部科学省の掲げる目標ですから、いずれは群馬県にも学びの多様化学校が設置されるでしょう。

ユニパスとは?最近話題の言葉を深掘り/群馬県が採用した新しい不登校の呼称をわかりやすく解説

関東25件のうち、高校はわずか2校

もう一つ、一覧から分かる特徴があります。

関東25件のうち、高校段階の学びの多様化学校は、

  • NHK学園高等学校「ライフデザインコース」
  • 星槎高等学校

のわずか2校です。

NHK学園高校は東京都国立市のコース指定型、星槎高校は神奈川県横浜市の本校型です。いずれも私立であり、2026年9月現在、関東には公立高校の学びの多様化学校はありません。

小中学校の学びの多様化学校数は増えているのに、なぜ高校は少ないのでしょうか。

高校には「学びの多様化学校」以外の選択肢がある

一つの背景として知っておきたいのが、高校段階では以前から、学びの多様化学校とは別の形で、多様な生徒を受け入れる仕組みが整備されてきたことです。

代表的なのが東京都のチャレンジスクールです。

東京都教育委員会はチャレンジスクールを、
主に小・中学校で不登校の経験があったり、高校で中途退学を経験したりして、これまで能力や適性を十分に生かしきれなかった生徒が、自分の目標を見つけ、それに向かってチャレンジする高校
と位置付けています。

昼夜間の定時制・総合学科・単位制で、午前・午後・夜間などから自分のライフスタイルや学習ペースに合わせた時間帯を選択できる仕組みです。

また神奈川県にも、

  • クリエイティブスクール
  • フレキシブルスクール

など、従来型の高校とは異なる学び方があります。

https://www.pref.kanagawa.jp/docs/dc4/tokushoku/hsw/keyword.html

そのため、

「高校の学びの多様化学校が2校しかない=不登校経験者が進める高校が2校しかない」

ということではありません。

チャレンジスクールやクリエイティブスクールは学びの多様化学校ではない

チャレンジスクールやクリエイティブスクールは学びの多様化学校と制度上別物です。

東京都のチャレンジスクールや神奈川県のクリエイティブスクールが、そのまま文部科学省指定の「学びの多様化学校」に該当するわけではありません。

学びの多様化学校は、不登校児童生徒に配慮した”特別の教育課程を編成するために文部科学大臣の指定を受ける制度“だからです。

ですが一方で、役割として近しい存在とは言えるでしょう。
「学校に行けないことで、子どもが学ぶ機会まで失わないようにする」
という根底は共通しています。

選択肢が増えたからこそ早期の整理を

選択肢が増えることは、望ましいことです。

一方で、
「学びの多様化学校がいいのか」
「今の学校に在籍したままでいいのか」
「フリースクールがいいのか」
「高校は通信制がいいのか」
「チャレンジスクールを目指すべきか」
と、判断の求められる場面が増えています。

また、不登校が長期化する中では、学校の問題だけでなく、

  • 生活リズム
  • 学習
  • 電子機器
  • 人間関係
  • 家族関係
  • 進路

など、複数のことを一緒に考える必要が出てくる場合もあります。

そのため、「まだ相談するほどではない」と感じている段階で、一度状況を整理しておくことに大きな意味があります。

子どもにどのような選択肢が残されているのかを知っておくことが、将来の機会損失を防ぐことにつながります。

まとめ

学びの多様化学校は、不登校児童生徒の実態に配慮して、通常とは異なる特別な教育課程を編成できる学校です。

制度上、東京都のチャレンジスクール等とは異なりますが、だれ一人取り残されないということをテーマに、機会損失を避ける取り組みという点では同様です。

今後も制度の整備や拡充が進むと予想されますが、それに比例して情報の収集や整理など、保護者に求められる判断機会が増えていくでしょう。
専門家に相談する。これを厭わないことが、お子様の将来を担保する第一歩です。

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